「有限会社」を「株式会社」に移行せずそのままにしておくのもアリ

 

平成18年(2006年)5月の会社法施行により、株式会社の最低資本金制度が廃止されるとともに、有限会社法が会社法に統合されました。
これに伴って、資本金が1円でも株式会社が設立できるようになりましたが、他方で有限会社を新たに設立することができなくなりました。

「有限会社→株式会社」への組織変更は簡易になっていますが、以下の理由から有限会社の場合は「有限会社」のままでも良いかもしれません。

 

「有限会社」のままでも大きな支障はない

有限会社は、法律上は「特例有限会社」という扱いで、継続して「有限会社」を商号に使用することができます。
後述する制限以外は、法律上は株式会社とほとんど同じ扱いになるため、大きな支障はないと考えられます。

逆に株式会社へ変更すると、登記や諸々の届出等の手続、印鑑、名刺、看板等の変更や取引先等への案内などの事務コストが発生することが考えられます。

 

有限会社では役員の任期がない

非公開の株式会社では、役員の任期は2年から最大10年まで設定することができますが、有限会社では任期そのものがありません。

よって、役員の追加・交代・退任がない限り、変更登記も必要ありません。

 

有限会社であることの価値が将来的に高まるかもしれない…

会社法施行に伴って、平成18年5月1日以降は有限会社を設立することができなくなりました。
今後、「有限会社」を商号に使う会社は減ることがあっても、増えることはありません。

つまり、有限会社の希少性は、今後存続すればするほど高まります。

有限会社であるということは、それだけ長く会社が存続しているということを意味するようになります。
したがって、「長く続いている会社」という好印象を外部から持たれることが期待できるのです。

 

以上を鑑みれば、「有限会社→株式会社」に組織変更をしなくても良いと言えるでしょう。

他方で、有限会社であることによって、法律上制限される場面があります。
下記に該当する場合は、組織変更を検討する余地があると思われます。

 

株式の譲渡制限

非公開の株式会社では、株式の譲渡をする場合には取締役会または株主総会の承認が必要です。
一方、有限会社では、株主以外の者に株式を譲渡する場合は承認手続が必要ですが、株主間での株式譲渡は自由です。

ということは、株主間で了解や合意がなくても支配関係が変わりうることになります。
万一、このような支配関係の変更に懸念がある場合には、株式会社への移行を検討した方が良いでしょう。

 

組織再編行為の制限

有限会社は、自らが存続会社となる吸収合併を行うことはできません。
また、自らが承継会社となる吸収分割を行うこともできません。株式交換、株式移転もできません。

将来、上記組織再編を行う予定の場合には、株式会社への移行をしておかなければ実施できない点にご留意ください。