費用を変動費と固定費に分解して損益分岐点売上高を算出することで、黒字確保のために必要な売上高が分かるという内容を、以前に書きました。
ただし、以下の点に注意が必要です。
1.「その売上高を達成すれば必ず黒字」とは考えない
損益分岐点売上高は、「1円たりとも誤差のない正確な金額」というわけではありません。
あくまで概算で出した目安の金額です。
本当に正確な計算をするのであれば、すべての費用について「変動費か固定費か」という分け方ではなく、回帰分析等を行って、変動費部分と固定費部分とを厳密に分けるなどの検討する必要があります。
限られた時間で、目安となる売上高を把握するために簡易的に行う計算ですので、たとえば算出された損益分岐点売上高が1億2500万円だったとしても、
「売上高が1億2501万円なら確実に黒字になる」
とは考えない方がよいです。
「黒字になるかもしれない。ただ、万が一のためにもう少しほしい」ぐらいのスタンスの方がよいでしょう。
2.損益分岐点売上高は年々変わる。しかも上昇傾向
損益分岐点売上高は、何年もの間ずっと同じ金額になるわけではありません。
毎年変わる可能性がありますし、多くの会社では上昇傾向にありますので注意が必要です。
損益分岐点が変わる要因
以前に書いた内容からすれば、損益分岐点が変わる要因は以下の2つとなります。
1.限界利益率の変化
変動費となる売上原価は主に、製造業であれば原材料費、人件費、経費、卸売業であれば商品原価によって構成されているでしょう。
物価が上昇して、これらの費用(単価)が上昇すれば変動比率が上がる、つまり、限界利益率が低下します。
同様に、同業他社との価格競争から値下げをすれば、限界利益率が低下します。
変動費の増大と販売価格の値下げによって限界利益率は低下しますので、そうなれば損益分岐点売上高は上昇することになります。
(もちろん、反対に変動費が下がったり販売価格の値上げを行えば、限界利益率が上昇し、損益分岐点売上高は低下します)
2.固定費の増減
固定費の増減も損益分岐点が変わる要因です。
変動費以外の費用が固定費となりますので多岐にわたりますが、たとえば規模拡大があれば
・設備投資をした → 減価償却費が増える
・社員を増やした → 人件費が増える
・給与のベースアップをした → 人件費が増える
・事務所を大きなところに移転した → 家賃が増える
といった形で固定費が増加して、結果的に損益分岐点売上高も上昇します。
そうでなくても、「固定費はどれも毎年必ず同額」というケースは少ないと思いますので、固定費発生状況の見直しと、それに伴う損益分岐点売上高の増減の把握は必要となります。
損益分岐点売上高が急激に大きく変動することは少ないかもしれませんが、以上のような要因で変動しうる点には注意しておくようにしましょう。