決算において、年度末の売掛金残高が前期末残高に比べて増加しているとします。
売掛金が増加している場合、売上高が増加していると見るのが通常ですので、売上高が前期よりも増加していれば「売上が増加したから売掛金が増えているんだ」とひとまずは推定できます。
しかし、売上高が増加していることのみをもって「だから売掛金が増加しているのであり、異常はない」とまで言い切ることはできません。売掛金と売上高それぞれの増加割合のバランスも見ておく必要があります。
ここで売掛金の増加に異常がないかどうかをザックリ(ザックリですが…)確かめる方法として、回転期間分析が有効です。
回転期間とは
回転期間とは、資産や負債の残高の妥当性を検証する際に、対応する損益が発生する期間の何期間分に相当する残高となっているかを表すものです。
売掛金の回転期間の場合は、「売掛金残高が売上高の何か月分に相当するか」を表します。
回転期間の算定方法
売掛金の回転期間は、基本的には以下のように算定します。
売掛金の回転期間(か月) = 売掛金残高 / 売上高 ÷ 12か月
算定された回転期間が1.5か月だったとすると、それは1.5か月分の売上高が期末に売掛金として残っているということを意味します。
たとえば12月決算で、年間を通して平均的に売上高が計上されている場合なら、期末の売掛金残高は12月と11月後半の売上高分であるということです。11月前半以前の売上高分については、すでに回収済みであることを意味します。
通常、回転期間は決済条件と整合しています。
もちろん決済条件が1つではなく、取引先によって様々な場合もありますし、同じ取引先でも取引内容などによって異なるケースも考えられますが、「だいたいこのぐらい」という平均的な決済条件は把握できると思いますので、それと回転期間とを比較することによって、異常の有無を把握することができるでしょう。
回転期間を前期比較する
売掛金の回転期間を前期比較し、同じような数値であれば「売掛金の増加は売上高の増加によるもの」と推定できるでしょう。
回転期間に大きな変動がある場合は、以下のような原因が考えられます。
・大口顧客の決済条件の変更
・決算月の売上高に大きな増減があった
・売掛金の滞留、回収遅延
・滞留していた(回収遅延していた)売掛金の回収
・売上の早期計上や架空計上
・売掛金の消込処理漏れ
売掛金の異常値の把握を効率的に
売掛金を決算時に詳細をチェックするのは煩雑ですが、最初のステップとして回転期間分析をしておくことで、売掛金残高に異常がないかどうかをザックリと確かめることができます。
まずは回転期間分析をしてみて、そこで異常な増減があれば原因を詳細にチェックしてみる
という形で決算分析を進めると効率的になるでしょう。