建物でも設備でも機械でも、固定資産を取得して使用を開始すると、減価償却というものを行うことになります。
減価償却とは、固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産を使用する期間にわたって費用配分する会計上の手続をいいます。
固定資産は高額のものが多いです。
固定資産の取得のために支出した期に、その全額を費用として計上すると、(モノによりますが)その期が大赤字になるくらいインパクトが大きくなる可能性もあります。
また、固定資産は長期間にわたって使用されるものが多いです。
建物にしても、設備にしても、機械にしても、1年だけ使ってすぐに交換というものは、ほとんどないでしょう(少額なものならありえますが)。
ここで、
「支出した期だけ大赤字になるという状況が、果たして会社の業績の実態を反映しているといえるのか?」
「固定資産は長期間にわたって稼働して利益の獲得に役立てるのだから、稼働する各期間の費用にした方がいいのではないか?」
といったことから、支出した期に全額を費用とするのではなく、使用期間にわたって費用を「配分」するという減価償却という手続が行われるようになりました。起源は19世紀のイギリスの鉄道会社です。
また、固定資産の「価値」の観点からも、減価償却を行う意義があると言えます。
固定資産は、購入して使用を始めてすぐにその価値がなくなるわけではありません。使用期間にわたって徐々にその価値が下がっていくものです。建物も機械も自動車も、使用を始めた直後に無価値になるということはないでしょう。
したがって、購入して使用開始した期間に全額を費用処理するよりも、価値の減少に応じて費用処理をしていく方が資産の実態に合うとも言えます。
「どのぐらいの期間にわたって費用としなければいけないのか?」については、本来的には「その企業が使用する期間」でしょう。使用を終えた後の期間にまで費用配分するのは適切ではないからです。
ただし、税法上は固定資産の種類によって耐用年数が定められており(法定耐用年数といいます)、それにしたがった減価償却費分だけが税務上の損金となります。
たとえば、パソコンの耐用年数は4年とされています。
(4年使い続けるかどうかはともかくとして…)
減価償却はしないとダメ?
減価償却は、会計上は当然に行うものです。固定資産を会社の利益獲得のために取得・使用している以上、それに要した支出は費用とする必要があります。
一方で税法上は、所得税法では減価償却は強制となっていますが、法人税法では任意となっています。
減価償却費は費用なので、減価償却をしなければその分だけ利益は大きく計上されることになります。
そして、法人税法では任意とされていることから、利益を大きく見せるために減価償却をしていない(減価償却費を計上していない)ケースもごくたまにありますが、メリットはあまりないかもしれません。
まず、黒字の場合は、減価償却費分だけ税務上の所得が大きくなり、その分税金が多くなるからです。
また、会計士や税理士なら決算書を一通り見れば「あ、減価償却してないな」とすぐに分かりますし、会計に精通している銀行担当者が見ても分かる可能性があるからです。
特に、税金面でお金の支出が大きくなるのはデメリットであると言えますので、基本的に減価償却は行うものと理解した方がよいと考えています。