安全性分析の指標の一つ、「流動比率」は参考程度に

 

財務分析の安全性の指標の一つに、流動比率というものがあります。
流動負債に対する流動資産の割合を示すもので、短期的な支払能力を測る指標の一つです。

流動負債に対して流動資産がどれだけカバーされているかを示すため、短期的な支払能力(安全性)が分かる、というものですが、以下の理由により必ずしも万能とはいえないので注意が必要です。

 

流動比率とは

流動比率は、以下の算式により算定されます。

 

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

 

1年以内に現金化される資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表しています。

会社の業種や規模によって目安となる数値は異なりますが、一般的には流動比率が120%以上あれば、短期的な資金繰りには困らないとされ、100%を下回っていると支払能力に不安ありとされているようです。

しかしながら、以下の理由から120%以上であっても必ずしも安全であるとはいえませんし、100%未満だからといって必ずしも危険であるともいえません。

 

流動資産には、すぐに現金化されないものも含まれている

流動比率は、短期的な支払能力の指標とされていますが、分子の流動資産には、現金以外に様々な科目が含まれています。

流動資産の多くを占める科目に売掛金や棚卸資産がありますが、これらは現金化されていないものですし、その全てが1年以内に現金化されるという保証もありません。
つまり、流動比率が必ずしも短期的な支払能力を担保するわけではない点に注意が必要です。

 

流動資産の現金化のタイミングも、流動負債の返済期限もいろいろ

流動資産も流動負債も「1年以内」という区切りで流動項目にひとまとめに計上されていますが、流動負債の中には12か月後に返済期限が来るものがあれば、1か月後に返済しなければならないものもあります。また流動資産にも、1~2ヶ月で現金化できるものもあれば、12か月後(あるいはそれよりも後)に現金化されるものもあります。

したがって、短期的な支払能力に問題がないかを見るには、流動資産・流動負債それぞれの中身も把握しておく必要があり、流動比率だけで短期的な資金繰りが安全かどうかを見極めるのは難しいといえます。

 

現金商売なら流動比率100%未満でも必ずしも危険ではない

また、現金商売の場合は流動比率が100%未満であっても資金繰りに窮することがないことも多いでしょう。
売上の急減がない限り安定的に一定額の現金が確保され、売掛金の回収という不確定要素がないからです。

 

あくまで参考程度の指標に

以上を踏まえますと、流動比率については

 

・指標の参考にはなるけれど、必ずしも万能ではない

・短期的な支払能力を見るには、流動比率だけでなく、流動資産・負債それぞれの中身やビジネスモデルがどうであるかも確認する必要がある

 

ということがいえます。

「120%以上だから安全」「100%未満だから危険」とは一概にはいえませんので、注意しましょう。