債権やモノを多く持つことによるリスク

 

債権やモノが増えれば、貸借対照表上の資産の部の金額が増加します。

他方、債権やモノを保有するということは、その分だけお金を別の形に変えて持つことを意味しています。
「売上代金をすぐ現金で受け取る代わりに、売掛金等の債権を持つ」
「商品や固定資産をお金で購入して、将来の売上でその分を回収する(元を取る)」
ということです。

ということは、お金になって一部(または全部)が戻ってこないリスクを抱えることも意味します。

 

リスクがなく、額面そのままで評価される資産はお金(現金預金)しかありません。
モノを保有すれば、より大きな金額で将来回収できる可能性もありますが、反対により小さな金額しか回収できないリスクがあるとも言えます。

 

貸借対照表上の大きな資産としては、売掛金、在庫、固定資産が主に挙げられます。
これらは、それぞれ次のようなリスクがあります。

 

売掛金が持つリスク

1.回収可能性

得意先の経営状況が悪化して売掛金の回収が遅れれば、回収可能性が問題になり、貸倒引当金の対象になります。
また、予定されていた入金が遅れることで、自社の資金繰りにも悪影響が生じます。

万一実際にその得意先が倒産すれば、売掛金が回収できない事態になり、大きな損失を被ることになります。

 

2.債権管理コスト

どの得意先にどのくらいの売掛金があるのか、回収予定日はいつか、約定通り回収されているか、無事に回収できそうか、等々の回収状況を管理するためのコスト(特に人件費)がかかります。

 

3.債権回収コスト

売掛金は、「得意先からの売上代金支払いを一定期間先に延ばすことを認めているもの」なので、実質的に見れば無利息でお金を貸しているのと同じです。

代金を早く回収すれば、そのお金を別のビジネス(収益獲得機会)の資金に充てられると考えれば、売掛金の存在によって機会損失が発生しているとも言えます。

 

在庫が持つリスク

在庫を長期間保有すると、陳腐化したり劣化したりする可能性があります。
売れ残れば、正規価格では売れなくなり、予定していた利益が得られなくなる可能性がありますし、さらには原価割れ販売や廃棄となれば、原価分のお金も回収できなくなる可能性があります。
また、在庫を保有していれば、物理的な盗難や紛失の可能性もあります。

商品の販売は、「仕入先にお金を支払って商品を買い、それを得意先に売ってお金を獲得する」というプロセスです。在庫を保有しているということは、その後半部分がまだ完了していない状態を意味します。

得意先に商品を売ることによって初めてお金になるのであって、在庫は「モノに姿を変えているお金」であり、「売れないと元の姿(=お金)に戻れない」のだという意識を持つことが必要です。

 

固定資産が持つリスク

1.資金回収に時間がかかる

固定資産は、ビジネスで利益を得るための手段として資金を投じる(投資する)もので、ビジネスで利益を得ることによって資金が回収されます。
その投資から回収までには、モノによって数年から数十年かかります。

2.資金回収が十分にできないリスク

テクノロジーの進化等の環境変化が激しい昨今では、機械や設備が陳腐化することもあり、回収する期間(利益を得るために稼働する期間)が、予期せず短縮されることもあります。
また、売却によって回収しようとしても、景気等の影響で、思い通りのタイミングや金額で出来ない可能性もあります。

3.持つだけでコストがかかる

固定資産は、購入時だけでなく、保有するだけでもコストがかかります。
税金、メンテナンス・保守費用、車検費用、修繕費用、増強費用等々、定期的にも不定期的にも発生します。

 

4.投資に伴って金利負担が発生していること

固定資産には通常、多額の資金が必要です。
購入資金を外部借入によって賄った場合、金利コストを負担することになります。

上記1のリスクが問題となれば、借入金返済への影響も問題となります。

以上を踏まえると、債権やモノの保有はリスクと表裏一体であると言えます。
債権やモノを持つこと全てが問題となるわけではありませんが、上記のようなリスクがあることも考慮に入れたうえで、どれだけ保有すべきかを検討することは大切です。