以前触れましたが、会社設立後に決算期(決算月)を変更することは可能です。
ただし、決算期を変更する場合に留意しておきたい点があります。
以下に、主な留意点を挙げます。
一度だけ1年未満の短期間で決算を行うことになる
決算期を変更する場合、変更しようとするタイミングによって、短期間の決算を行わなければならなくなります。
例えば、3月から6月に決算期を変更する場合を例にします。
従来、3月決算だった会社の決算期を6月決算に変更する場合には、変更しようとする直前の期間、つまり4月~6月の3か月間で一度決算を組まなければならなくなります。
時系列で表すと、以下の通りです。
X0年4月~X1年3月 → 従来の決算(1年間)
(ここで「これから決算期を変更する!」と決定)
X1年4月~X1年6月 → 決算期変更のために、3か月間で決算
X1年7月~X2年6月 → 決算期変更後の決算(1年間)。
以降、毎年6月末で1年間の決算。
短い決算を一度行うのは、税務申告を「1年以内」に行わなければならないという税法上のルールがあるためです。
つまり、決算期変更を行う場合には、経過措置のような形で一度だけ、数か月だけの決算をしなければならないのです(決算日から原則2か月以内に税務申告書を提出しなければならないのは変わりません)。
極端な例ですが、「3月→4月」に決算期を変更する場合には、4月の1か月間だけの決算を一度行うことになります。
1年未満の決算を行うことに伴う注意点
次に注意したいのは、決算期変更によって1年未満の決算を行う際は、限度額や判定基準も「1年未満」に置き換える必要が生じる点です。
例えば、交際費の損金算入限度枠は800万円になっていますが、これは「年間」の金額です。
したがって、上記例のように3ヶ月の決算を行う場合には
800万円 × 3ヶ月/12ヶ月 = 200万円
がその期の限度枠となりますので注意が必要です。
減価償却費も同様です。
通常のように償却率を乗じるだけでは、年間の減価償却費が算出されるのみです。
これを決算期間(月数)で月割計算しなければ、適正な減価償却費が算出されませんのでご注意ください。
消費税の判定も同様です。
消費税の計算においては、基準期間における課税売上高が、簡易課税の選択や免税事業者の判定に影響を及ぼします。
課税売上高が5千万円以下であるか(簡易課税の適用可否)や1千万円以下であるか(免税事業者の判定)は、いずれも「1年当たりの金額」を意味していますので、これも決算期間(月数)で月割計算を行った課税売上高で判することになります。
また、地方税の均等割も同様に、通常の均等割額を月割計算することで算出することになります。
決算月に偏りが見られる要因
上場企業では多くの会社が3月決算です。
他方、外資系企業では、ほとんどの会社が12月決算です。
これは文化的な要因が多分にあるものと思われます。
【日本】
・政府の会計年度が4月~3月である
・年明けの1月はお正月がある
【欧米】
・12月はクリスマス休暇があるが、お正月のような年初行事はない
・役所等に4月~3月のような会計年度がない。
決算期についてはどの月に設定しても問題はなく、さらに言えば、決算日を月末にしなければならないということもありません。
必ずしも「3月31日」や「12月31日」のような月末日を決算日としなくてもよいのです。
実際、創業者の誕生日を決算日としている上場会社もあります。
よって、決算日は好きなように設定することが可能です。
(ただし、メリット・デメリットはありえます)
ちなみに、決算日を変更する場合、非上場の会社であれば、特に理由等を決算書の注記により開示する必要はありませんが、上場会社や大規模企業であれば、理由について注記したりプレスリリースを出す必要が生じます。
決算のタイミングにはメリット・デメリットがありますし、どのタイミングがベストなのかもケースバイケースですので、決算日を変更する際はいろいろな視点・側面から検討されるとよいでしょう。